定例会 大阪湾と大阪魚食文化②「田尻町」

田尻町の幻の玉葱「吉見早生」を大阪料理会約30件の料理店が購入、翌年からの契約栽培化も。

2025年7月12日。第二回定例会が催されました。田尻町役場から、産業振興課の加藤課長にお越し戴き田尻町の現在の魅力を海と里山に分けてお話いただきました。また、今回の試食勉強会にあたって田尻町から幻の玉葱「吉見早生」をお分け戴き、事前に大阪料理会の各料理店が自主的に購入。翌年もまた購入したいとする店舗を母体に、契約栽培化も検討しています。この日は、そんな大阪料理会の会員店(東大阪市 日本料理「菜ばな」)からの試作メニューが振る舞われました。ひとつは「吉見早生の大阪すり流し椀」。吉見早生と季節のアサリを使っての椀物。濃厚な玉葱の味わい口中に広がる逸品。勉強会ではその家庭での作り方のレシピを資料として配付。もう一品は、吉見早生と田尻町産いずみタコの「おろし和え」。

勉強会の後半は、全国の漁港に魁けた「海業(うみぎょう)」への取り組みで注目を集めている田尻町の魅力を大阪の地魚に詳しい太田氏より紹介がなされました。特に日曜朝市にまつわる、見る楽しみ、選ぶ楽しみ、買う楽しみを説明。これまでの獲(と)る漁業から、販売する漁業へ転換する都市型漁業の在り方に参加者は耳を傾けました。

続いては、本日の食材である「ハモ」「タコ」を説明。今回の食材はいずれも田尻町の漁師から直接買い付けた鮮度の良さに舌鼓をうちました。魚介の料理を担当したのは、大阪郷土料理研究家の佐野氏。先付けとして供されたのは「明石タコと大阪泉タコの食べ比べ」。

この後にはハモとタコそして吉見早生を使った、田尻町の海と里山の季節の食材によるコース料理を堪能。各料理の間には、大阪観光局から、大阪の魅力をまとめた資料が配付され、参加者からの質疑応答なども行われました。

『田尻町の食文化』

田尻町は泉州タマネギ発祥の地であり、日本におけるタマネギ栽培の先鞭の地でもあります。私たちに馴染みの深いタマネギのルーツを遡れば大阪府の田尻町に行き着くとも言われています。そんな田尻町ですが昔からタマネギが栽培されていたわけではありません。その昔、田尻町は天下の台所と評された大阪市域の南部に位置する土地として、水稲や綿作、甘蔗(サトウキビ)、菜種、タバコといった商品作物の栽培が行われていました。特に江戸時代中期頃からは実綿、菜種では泉州が全国でも突出。収穫高で全国第一位でした。しかし明治初年からの唐糸の輸入に加えて、明治29年には綿花輸入の関税が撤廃となり大阪府の綿作は壊滅状態となりました。こうした中、幾多の困難を極めたタマネギ栽培は次代の今井伊太郎らに引き継がれ、日本人の嗜好に合ったタマネギ創りに向けた品種改良に取組んだのでした。栽培当初は、誰も買う者がないタマネギでしたが、食の洋風化が追い風となり次第に生産量も増加。泉州タマネギの名は全国ブランドとなり生産量は日本一となったのです。また同町は、水産業においても非常に先進的な取り組みを続けてきたことで知られ、最近では浜の活力再生プラン優良事例として農林水産大臣賞を受賞しています。こうしたことを踏まえ、浜には若い担い手漁業者が次第に増えると同時に、独自の海業(うみぎょう)としての漁業の幅を拡げています。

「定例会での イチ押し商品: 吉見早生玉葱」

今井伊太郎が品種改良をした傑作玉葱。刺身玉葱の異名を持つ幻の玉葱。当日は1袋1kgを50袋が用意され、閉会と同時に完売しました。